お坊ちゃまとたたきあげ~安倍晋三と田中角栄

 "お坊ちゃま"とは英語でどう表現するんだろうかと、安倍総理が退陣してからとかく悪名高き代名詞のようになってしまい、年金問題や格差が叫ばれている今日、家にお金があって苦労をしない人には風当たりが強いのは当然で、それが総理大臣という職をなげうってしまえば、原因の矛先は"お坊ちゃま"育ちということで落ち着いてしまうんでしょう・・・。
 その対極にあるのが、"たたきあげ"。今の政治には野武士が必要だと耳にしたとき、いわゆる"たたきあげ"という言葉が記憶の底から浮かんできた。"たたきあげ"は英語で"self-made man"と言いますが、イメージがつかみやすい感じの単語。お坊ちゃまという意味にしっくりくる英単語がみつからないので、"Shinzo Abe"、"not self-made man"と検索窓に入力して結果をみても、安倍晋三はお坊ちゃまだから辞任したというのはさすがになく、"not"をはずして検索してみると、日本の政治家でself-made manというと、田中角栄の名前が出てきました。政治手法には賛否両論ありますが、日本人はもちろん、海外のメディアでもself-made manという認識があるんですね。

 それでは、The DragonsShadowというところから少々引用させていただきます。

 Japan’s ability to take its place on the world stage owed much to one person,
Tanaka Kakuei, a politician and force of nature. A self-made man and a builder
both literally and figuratively, Tanaka was not a member of the traditional
prewar elite. Unlike most postwar prime ministers, he did not have a
background in the bureaucracy either. Yoshida, with the benefit of the US
security umbrella, had mediated between one-country pacifists and traditional
nationalists to rebuild Japan and create a new “reconstruction” identity. Tanaka,
largely with the force of his own will, forged a new, forward-looking
“construction” identity for Japan, but one that nonetheless retained key elements
of antimilitarism. This new identity became the ideational basis for Friendship
Diplomacy towards China.

 田中角栄の対極に吉田茂の名前がでています。吉田茂(自民党幹事長・麻生太郎の祖父)は戦前外務省にいた人ですよね-いわゆる官僚機構(bureaucracy)のひと。日本の首相が長く続けられる条件が書いてあります-アメリカと右寄りの人たちと仲良くしておく、そして静観。記憶に新しいところで小泉元首相。
 内政ではreconstruction(日本列島改造論)。外交面ではFriendship Diplomacy towards China。これが自分の首を絞めることになってしまったようで・・・ロッキード事件。
 昔の政治家はどことなくあくの強い人が多かったような気がします。それだけ個性的でもあったような・・・。なんでしょうか、あの漂ってくるもの。今の日本の政治家のなかにも漂ってくる人がすくなからずいますが、どうも悪者あつかいされてしまう。腰がすわっている感じで時代の要請があれば、また出番がくるのでしょう。田中角栄から漂ってきたなんともいえない空気はもしかしたら、たたきあげ(self-made man)から来るものかもしれない。