韓国語といったらハングル文字。その由来を韓国語で読んでみる。

 韓国語の教材をはじめて手にしたのは今から10年ほど前、大韓航空(Korean Air)の機内で韓国の女性カメラマンと話をしたのがきっかけでしたが、お互いの共通言語は「英語」。英語で話をしながらも、なにかお互いに共通のものを持っているなあと感じたんですよね。性格が合うとか色が同じとかの個人的なものではなくて、もっと形而上的に奥が深くて、歴史的とか文化人類的とかもやっとしたものなんですけど、話の中でお互いの名前を手帳に書いて紹介したときにあれっと思ったのが、彼女がハングル文字で「김」と書き(この時初めてハングル文字をみたんですよね・・・)、その横に漢字!!で「金」と書いたんです(あれ? 漢字?)。それまで西洋一点張りでしたので、日本を含めて近隣諸国の歴史の知識が全然ないものですから、これはかなりのカルチャーショックというのか、漢字は中国と日本だけではなかったのかとその時はなぜか安心感というのか安堵感が心のなかに漂ったふうに覚えています。帰国後は日本と韓国の歴史、特に古代史関連の本を読み漁ったり、韓国語の教材を買ってきて読んだり中断したり再開したりと今日まで至っていますが・・・。

 日本語には漢字、ひらがな、カタカナが文字としてあるのは当然のように思っていますが、むかーしむかーしの書物は漢字だけですよね。漢字辞書を見ると「訓」とか「音」の読み方があって、「音」には「呉音」なんてものもある。恥ずかしながらこの意味を理解したのは、韓国語に出会ってからでして・・・。言語学的にどういった定義をしているかは分かりませんが、言葉はあっても文字はなし-喋り言葉はあっても書き言葉がない。古今東西の歴史を紐解けば、書き言葉としての文字は文明国から輸入している場合が多いですよね。文字は輸入であっても、オリジナルな言語というものは各民族は持っているらしいけど、文字がない。輸入した文字でオリジナルを表現したいのだけれど、喋り言葉の音や意味をそっくりそのまま翻訳できないというジレンマがおこるらしい。そこで試行錯誤を繰り返し体系的に整ったものが出来上がるらしいのですね。自分の子供にこれを説明しても頭が混乱しているようなのでここは短く-

 「訓」というのは「日本語」で、「音」というのは中国語

 -以上・・・。

 韓国というのか朝鮮でもそんなもやもやとしたジレンマがあったらしいのです。韓国語をかじったことがあるひとならこの言葉はご存知-

 훈민정음(訓民正音)

 ここは直接韓国のサイトからそのあたりのモヤっと感を韓国語で読んでみましょう。훈민정음(訓民正音)に関する詳しい情報が載っているサイト(www.hangul.or.kr)を見つけましたので、そちらから少々引用させていただきます。原文記事にはexciteでさっと翻訳しまして軽く手直ししたものを載せておきます。韓国語の辞書はNAVER(dic.naver.com)を利用させていただきます。

 原文
 우리 나라 말이 중국과 달라 한자와는 서로 잘 통하지 아니한다.

 我国の言葉は中国と異なり、漢字とは相互によく通じない。

 ※ウルマル(朝鮮語)は中国の漢字ではうまく表現できないということでしょう・・・。

 原文
 이런 까닭으로 어리석은 백성들이 말하고자 하는 바 있어도 마침내 제 뜻을 펴지 못하는 사라미 많다.

 こうした理由で、文字の読み書きが不自由な民衆が言いたいことがあっても、結局言いたいことも言えずじまい。

 ※僕のガールフレンドを紹介しますと日本語ではいいんですけど、girl friendと英語で言わないほうがいいとはフランスの語学学校で知り合ったポーランド人が言っていましたよ・・・。

 原文
 내가 이겟을 가엽게 생각하여 새로 스믈여덟 글자를 만드니.

 私がこのことを不憫に思い、新たに28文字を作った。

 ※내は세종대왕(世宗大王)を指します・・・조선 제4대 왕(1397~1450). 이름은 도(祹). 자는 원정(元正). 집현전을 두어 학문을 장려하였고, 훈민정음을 창제하였으며, 측우기·해시계 따위의 과학 기구를 제작하게 하였다.(NAVERより)-朝鮮第4代の王(1397~1450)。名は祹。字は元正。集賢殿を設けて学問を奨励し、訓民正音や雨量計・日時計などの科学器具を作った。

 原文
 모든 사람들로 하여금 쉬이 익혀서 날마다 쓰는 데 편하게 하고자 할 따름이니라.

 すべての人たちが容易に書けて、日々使うのに便利なようにしたいと思うばかりだ。

 ※「쉬이 익혀서」の部分は、自分が持っている韓国語の教材では「백성들에게 쓰기 쉽고 배우기 쉬운 글자가 ・・・」といった感じでありましたので、おそらくそういった意味があると思います。

 さて、日本ではどうでしょうか。日本のハングルに当たるのは「ひらがな」・「カタカナ」になると思いますが、ピンッとくるのが紀貫之の「土佐日記」。「男もすなる、日記といふものを、女もしてみむとて、するなり・・・」という冒頭部分は有名ですが、仮名で書くことによって漢字では表現できない微妙なニュアンスを書き込むことができたんでしょうか。「土佐日記」の原文は「Wikisource」で見られますよ。